「余ったら貯金」でつまずいていませんか
資産形成を始めようと思い立ち、家計簿アプリを入れたりレシートを集めたりして家計の現状を調べたものの、「毎月末になると、思ったほどお金が残っていない」という悩みを抱える方は少なくありません。
支出の全体像を把握することは大切ですが、把握しただけで終わってしまうと、日々の支出の勢いに流されて手元にお金が残らない状態が続いてしまいます。
特に、将来に向けた投資を検討している場合、まず確保すべきなのは病気や休職、突発的なアクシデントに備える「生活防衛資金」です。この資金が準備できていない状態で投資を始めてしまうと、急な出費が必要になった際に、値下がりしているタイミングであっても投資信託や株式を取り崩さざるを得なくなります。
生活防衛資金を確実に確保するためには、「毎月の余剰金を貯める」という意識から脱却し、仕組みとして生活費から切り離す工夫が必要です。
家計の見える化から一歩進める「口座の役割分担」
手元にお金が残らない大きな原因のひとつに、「生活費を使う口座」と「貯蓄を保管する口座」が同じになっている点が挙げられます。ひとつの口座にまとまっていると、口座残高を見たときに「まだこれだけ使える」と無意識に判断してしまいがちです。
この問題を解消するためには、家計を見える化した次のステップとして、金融機関の口座を用途別に3つに分けることを検討してみましょう。
1. 使う口座(日常の決済用)
給料の振込先に指定し、家賃、水道光熱費、通信費などの引き落としや、日々の生活費の引き出しに使う口座です。毎月この口座の中で生活をやりくりします。
2. 守る口座(生活防衛資金用)
急な病気や失業、災害など、予期せぬトラブルが発生したとき以外には絶対に引き出さない口座です。日常生活で目に入らないように管理し、原則としてデビットカードやキャッシュレス決済アプリとの紐付けは避けます。
3. 増やす口座(将来の投資用)
生活防衛資金が一定程度確保できた後に、NISAなどの制度を利用して資産形成を行うための口座です。証券会社等に開設します。
このように「場所」を物理的に分けるだけで、「今月使ってもよいお金」と「手を付けてはいけないお金」の境界線がはっきりします。
生活防衛資金を積み立てる3つのステップ
口座の役割を決めたら、生活防衛資金を確実に積み上げるための流れを作りましょう。
ステップ1:毎月の最低限の生活費を計算する
まずは家計を見える化したデータをもとに、「これだけあれば1か月暮らせる」という最低限の生活費(住居費、食費、光熱費、通信費など)を算出します。この金額を基準にして、数か月分から半年分程度をひとつの目安として目標額を設定します(自営業やフリーランスの方は、収入の変動を考慮して長めの期間を想定するなど、ご自身の働き方に応じて判断します)。
ステップ2:給与日の直後に自動で別口座へ移す
給料が振り込まれたら、生活費として使ってしまう前に、決めた積立額を「守る口座」へ自動で振り替える設定を行います。金融機関の「自動入金サービス」や「定額自動振込サービス」などを利用すると、毎月手作業で移す手間がなくなり、使い込みを防ぐことができます。
ステップ3:「使う口座」の残高だけで生活するルールを作る
毎月の生活費は、先取り貯蓄を引いた後の残高の範囲内で収めるようにします。もし月末に「使う口座」にお金が余った場合は、ご褒美として使ってもよいですし、次月の予備費として残しておいても構いません。大切なのは、「守る口座」に一度入れたお金には日常的に一切手を触れないことです。
生活防衛資金が貯まる前に投資を始めたくなったら
最近ではNISAの普及などに伴い、「早く運用を始めないと機会を逃すのではないか」と焦る気持ちを抱くこともあるかもしれません。
しかし、運用資産は市場環境によって価格が大きく変動します。生活防衛資金がないまま投資に資金を回してしまうと、万が一の出費の際に、元本を割り込んでいる状態でも換金せざるを得ず、結果として損失を確定させてしまうリスクが高まります。
もし、どうしても投資を体験してみたい場合は、生活防衛資金の積立を主軸にしつつ、家計に影響のないごく少額(ポイント投資や少額の積立など)にとどめておくという選択肢もあります。運用の仕組みや値動きの感覚を少しずつ学びながら、本番の資産形成は生活防衛資金が整ってから本格化させる、という順序を守ることが大切です。
投資は自己責任で、最新の制度は公式情報をご確認ください。
